グレスト王国物語
*眠れる花の街
「ようこそ春と雪解け水の街、ローラへ」
汽車を降りた私の目に止まった板─雪が積もった立て看板には、そう書いてあった。
吹きつける風は、肌を刺すように冷たい。
太陽を覆った厚く暗い雲からは、ちらり。ちらり。と真っ白な雪が落ち始めていた。
「今って、5月……ですよね。」
私の初任務先、「ローラ王国」。
グレストに数ある発展途上の小国の一つ。
未だに兵士が馬に乗って仕事をしている、言わばグレストの田舎。
国中で最も早く春が訪れることで有名だ。
私は、先ほど寝ぼけながら汽車の窓から見た国境の景色が、新緑に彩られた春模様だったことを思い出した。
しかし、今私目の前に広がっているのは、雪の白に呑まれた小綺麗な城下町。
街は物音もなくしんとしていて、どことなく不気味だった。
空気までもが、凍りついている。
足元から、ぞくりと冷気が這って来た。
汽車を降りた私の目に止まった板─雪が積もった立て看板には、そう書いてあった。
吹きつける風は、肌を刺すように冷たい。
太陽を覆った厚く暗い雲からは、ちらり。ちらり。と真っ白な雪が落ち始めていた。
「今って、5月……ですよね。」
私の初任務先、「ローラ王国」。
グレストに数ある発展途上の小国の一つ。
未だに兵士が馬に乗って仕事をしている、言わばグレストの田舎。
国中で最も早く春が訪れることで有名だ。
私は、先ほど寝ぼけながら汽車の窓から見た国境の景色が、新緑に彩られた春模様だったことを思い出した。
しかし、今私目の前に広がっているのは、雪の白に呑まれた小綺麗な城下町。
街は物音もなくしんとしていて、どことなく不気味だった。
空気までもが、凍りついている。
足元から、ぞくりと冷気が這って来た。