グレスト王国物語
***
動かなくなったリフィエラを眺めて、キリュウは満足気に唇を歪めた。
先ほどから、研究所のあちこちで原因不明の火災が起こっているようだったが、今は護衛用のアンドロイドが全て鎮火しつつある。
祟りかと、一瞬でも焦りを感じた自分を笑った。そんなふざけた迷信、あるはずかない。
(もうすぐ、私の時代が来る……)
神ではなく科学が支配する時代。死人と容易に再会できる時代。キリュウは、笑った。
その時であった。
ズズ……ズズズ……
大理石の床が、不気味に揺れる。地震とは比べものにならない。
治まる気配を見せないその揺れが、研究室の目前まで迫った爆発であるとキリュウが気づくころには、室内に灼熱の空気が満ち始めていた。
「な…何だ!?火災報知器はどうした!!」
「そんなもの、当の昔に壊しマシタよ。キリュウ博士。」
聞き慣れた、大嫌いな声がした。娘と同じ声を持ちながら、娘とは違う作り物の、声。
ドアが、ゆっくりと開く。熱風が吹き込んで来た。外は、真っ赤な火の海だった。
ゆらゆらと、蜃気楼のようにその赤の中に浮かぶHannaの姿は、さながら深紅の炎の翼を持った悪魔だった。
「は…Hanna…どういうつもりだ……。」
「どういうつもりダ……?それは私の台詞デス。なぜ、私の母がそこに横たわっているんデスか。」
「これは……」
「知っていマスか。薬屋の国長が井戸水に毒を混ぜていたんデス。
毒の水を飲んだご婦人方は、不妊に悩むようになりマシた。
悩んだご婦人方は、人工の子供を欲するようになりマシタね。
………さぞや儲かったデショう?キリュウ博士。」
ごうごうと音を立てて渦巻く業火を臆することなく、Hannaは続ける。
その冷め切った視線は、まっすぐにキリュウただ一人を射ぬいていた。
動かなくなったリフィエラを眺めて、キリュウは満足気に唇を歪めた。
先ほどから、研究所のあちこちで原因不明の火災が起こっているようだったが、今は護衛用のアンドロイドが全て鎮火しつつある。
祟りかと、一瞬でも焦りを感じた自分を笑った。そんなふざけた迷信、あるはずかない。
(もうすぐ、私の時代が来る……)
神ではなく科学が支配する時代。死人と容易に再会できる時代。キリュウは、笑った。
その時であった。
ズズ……ズズズ……
大理石の床が、不気味に揺れる。地震とは比べものにならない。
治まる気配を見せないその揺れが、研究室の目前まで迫った爆発であるとキリュウが気づくころには、室内に灼熱の空気が満ち始めていた。
「な…何だ!?火災報知器はどうした!!」
「そんなもの、当の昔に壊しマシタよ。キリュウ博士。」
聞き慣れた、大嫌いな声がした。娘と同じ声を持ちながら、娘とは違う作り物の、声。
ドアが、ゆっくりと開く。熱風が吹き込んで来た。外は、真っ赤な火の海だった。
ゆらゆらと、蜃気楼のようにその赤の中に浮かぶHannaの姿は、さながら深紅の炎の翼を持った悪魔だった。
「は…Hanna…どういうつもりだ……。」
「どういうつもりダ……?それは私の台詞デス。なぜ、私の母がそこに横たわっているんデスか。」
「これは……」
「知っていマスか。薬屋の国長が井戸水に毒を混ぜていたんデス。
毒の水を飲んだご婦人方は、不妊に悩むようになりマシた。
悩んだご婦人方は、人工の子供を欲するようになりマシタね。
………さぞや儲かったデショう?キリュウ博士。」
ごうごうと音を立てて渦巻く業火を臆することなく、Hannaは続ける。
その冷め切った視線は、まっすぐにキリュウただ一人を射ぬいていた。