グレスト王国物語
シャ、シャ、シャ、

窓から流れて行く景色はどんどん遠くなって行く。

いつまでも、この景色を見ていたくて。私は窓に顔を押し付けた。

「…綺麗だな。」

不意に、穏やかなブラッドの声が聞こえた。今までに聞いたことがないほど、その声は、本当に穏やかだった。

「忘れてた。」

この人は、いつも私の前ではサングラスを外す。

燃える炎を切り取ったような紅の瞳には、一体何が映っているんだか。

「俺たちは、あいつらと共に生きてるんじゃなく、

……生かされてるんだったな。」

優しげに緩む口元。この人、本当は優しい人なんだろうな。

リフィエラも、キリュウも、Hannaも。そうだったのかも知れない。

この奇跡は、この世を去って行った少女からの、最後のメッセージだと、今は思いたかった。

そうですねと相づちを打って。

「生かされてるんですね。」
あの街の人達が、早くそれに気がつけば良い。そんなことを考えていた。

街を覆い、風にそよぐ綿毛は、快晴の青空の下、目に痛い程真っ白だった。
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