グレスト王国物語

*プロローグ

コトコト、コトコト、

道にある僅かな凹凸(おうとつ)が直に伝わって来る。

人生で初めて味わう馬車の旅に、私の身体はすでに悲鳴を上げていた。身体中が痛い。

馬車ならまだましだが、今私達が乗っているのは荷馬車の中。いくらなんでもあんまりだ。

本来なら今回の任務先へは列車で移動できるはずだったのに、つい先日、死者30人を出す地震が起こり、線路やら道やらが崩壊してしまったらしい。

それで、急きょこれで向かうことになった。

最近、こういうニュースは多い。

だけど、なぜかしら現実味に欠ける。

遠い遠い、どこか違う世界のことに感じてしまう。

荷馬車に張られている帆の隙間から外を覗くと、馬車はすっかり薄暗い森の中に入り込んでいた。

だが、お給料のため、仕事をすっぽかすわけにはいかない。

親も(養ってくれる彼氏も!)いないから、私が働く他ないのだ。

頑張れ私。
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