グレスト王国物語
白い世界に、声がする。

シルヴァ…シルヴァ…

誰かが呼んでいる。
父さんかな。母さんかな。
ああそうだ。
2人は死んでしまった。
誰かに殺されてしまった。
殺人なんて都会ではよくあることだと言われて。
手がかりすら探してはくれなかった。

あぁ──

「シルヴァ、」
「警察……」
「はぁ?」

目が覚める。

地割れに呑まれた気がしたのだが、なぜか私は生きていた。

ブラッドが覗きこんでいる。起こしてくれたようだった。

背伸びをすると、強ばっていた背中と肩の骨がバキバキと嫌な音を立てた。

「ここは……?」

「着いたみたいだぞ。魔法都市ガーディアナ。」

目をこすってよく見てみると、そこは荷馬車の中ではなく、古い木製の小さな部屋だった。

部屋の割に大きな窓からは、柔らかい日の光が差している。

全体的に木が古いせいで黒っぽいが、アクセサリーよろしく部屋のあちこちから垂れさがる唐辛子やドライフラワーがアクセントになって、あまり暗く見えない。

妖精が住んでいそうだ。

「ここが…」
「目が覚めたようだな。」

不意に、不機嫌な声。
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