グレスト王国物語
「元々妻は体が弱かったんですがね、ローラはここ数年間ずっと冬が続いていたんです…
雪も溶けず…税金も増える一方で、ろくな食べ物や薬が買ってやれなかったんですよ…」
かわいそうに。
男はまるで自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「みんな、あいつのせいだ…」
男はなおも狂ったように言う。
「あの、イカれたバルベール王子の……」
心の底からの憎しみの声。
自分に向けられた憎悪ではないのにも関わらず、体が震えた。
寒さからではない。いつしか、震えが、止まらなくなっていた。
…怖い。
「シルヴァ、行くぞ。」
後ろから、ブラッドが私の名を呼んだ。
私は呪縛から解き放たれたようにその声のする方へと走った。
呪縛…そう、呪いだ。
この土地の空気には、そんな表現が、妙にしっくりきた。
ずる、ずる、と男は造花を一杯に積んで飾ったそりを引いて行く。
鮮やかな偽の花で飾ったその中には、きっと彼の妻の痩せこけた死体が埋もれているのだろう。
ずる、ずる、
重苦しく空虚な音が、いつまでも広場に響いていた。
雪も溶けず…税金も増える一方で、ろくな食べ物や薬が買ってやれなかったんですよ…」
かわいそうに。
男はまるで自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「みんな、あいつのせいだ…」
男はなおも狂ったように言う。
「あの、イカれたバルベール王子の……」
心の底からの憎しみの声。
自分に向けられた憎悪ではないのにも関わらず、体が震えた。
寒さからではない。いつしか、震えが、止まらなくなっていた。
…怖い。
「シルヴァ、行くぞ。」
後ろから、ブラッドが私の名を呼んだ。
私は呪縛から解き放たれたようにその声のする方へと走った。
呪縛…そう、呪いだ。
この土地の空気には、そんな表現が、妙にしっくりきた。
ずる、ずる、と男は造花を一杯に積んで飾ったそりを引いて行く。
鮮やかな偽の花で飾ったその中には、きっと彼の妻の痩せこけた死体が埋もれているのだろう。
ずる、ずる、
重苦しく空虚な音が、いつまでも広場に響いていた。