グレスト王国物語
+イマワシキ モノガタリ ノ ハジマリ
***
力を入れた両の掌の中で喘いでいた銀髪の娘は、しばらく藻掻いていたが、やがて動かなくなった。
ブライトはだらりと力が抜けた娘の体を担ぎ上げ、元来た道を引き返そうと踵を返す。
触れただけで、その器には大いなる不安や悲しみが満ちていることが分かった。
火の女神フレイアの眼球を抉って取り出した最後の女神の涙も、今この掌に収まっている。
何もかも、計画通りに。
「ま……テ、」
死にかけのドラゴンが呻いているが、ブライトは気にもせずに歩みを進める。
元々しぶとい連中だ。あの程度の傷で死にはしないだろう。
背後からフレイアが放った火の玉が飛来し、短く切りそろえた髪を掠めて焼いていった。
だが、それでも男は歩みを止めない。
女神の涙がじんと熱を帯びているのを感じて、その顔にはみるみると滲むように恐ろしい笑みが広がった。
もうすぐ、夢が叶うのだ。
そして、もうすぐ終わるのだ。
長きに渡り味わい続けた、苦き屈辱の時が───
力を入れた両の掌の中で喘いでいた銀髪の娘は、しばらく藻掻いていたが、やがて動かなくなった。
ブライトはだらりと力が抜けた娘の体を担ぎ上げ、元来た道を引き返そうと踵を返す。
触れただけで、その器には大いなる不安や悲しみが満ちていることが分かった。
火の女神フレイアの眼球を抉って取り出した最後の女神の涙も、今この掌に収まっている。
何もかも、計画通りに。
「ま……テ、」
死にかけのドラゴンが呻いているが、ブライトは気にもせずに歩みを進める。
元々しぶとい連中だ。あの程度の傷で死にはしないだろう。
背後からフレイアが放った火の玉が飛来し、短く切りそろえた髪を掠めて焼いていった。
だが、それでも男は歩みを止めない。
女神の涙がじんと熱を帯びているのを感じて、その顔にはみるみると滲むように恐ろしい笑みが広がった。
もうすぐ、夢が叶うのだ。
そして、もうすぐ終わるのだ。
長きに渡り味わい続けた、苦き屈辱の時が───