グレスト王国物語
*血雨
しと、しと、
湿った音を立てて道端に止まった車から降りると、強烈な腐臭が鼻腔を焼いた。
ブラッドは思わず眉を寄せて、顔をしかめた。闇色の髪をしとどに濡らすその雨水に、手を触れてみると、それは確かに血の色をしていた。
ここは、首都グレスト。エルザが言った通り、空から生温かい血の雨が落ちてくる。
ブラッドは、グレスト城(城と言ってもその名は古の時代の名残であり、現在は只のビルである。)に隣接する、グレスト国家警察本部にたどり着いた。
特別調査部隊シオナの長が帰還したと言うのに、出迎えに来た部下は、エルザだけだった。
「ボス、お帰りなさい。」
酷く疲労した声でそう言って、エルザは傘を差し出した。
「この雨には濡れない方が良いわよ。」
「シオナの連中は、どうした。」
「すみません。皆どうにも動けなくって…この雨、長く当たり続けるとどうも体がだめになるみたいで…」
「…おい、あいつら今どこにいるんだ、」
「あぁ、だめよ行かない方が良いわ。ブライト様が、至急国務長官室に来るようにと。とにかく、今は急いで…」
そう言って、彼女(本当は彼なのだが)は力なく手招きする。
体がだめになると言う表現が、何となくひっかかったが、上官の命令であるからには仕方がないとブラッドは先を急いだ。
外には相変わらず、吐き気を催すような臭いが満ちていた。
湿った音を立てて道端に止まった車から降りると、強烈な腐臭が鼻腔を焼いた。
ブラッドは思わず眉を寄せて、顔をしかめた。闇色の髪をしとどに濡らすその雨水に、手を触れてみると、それは確かに血の色をしていた。
ここは、首都グレスト。エルザが言った通り、空から生温かい血の雨が落ちてくる。
ブラッドは、グレスト城(城と言ってもその名は古の時代の名残であり、現在は只のビルである。)に隣接する、グレスト国家警察本部にたどり着いた。
特別調査部隊シオナの長が帰還したと言うのに、出迎えに来た部下は、エルザだけだった。
「ボス、お帰りなさい。」
酷く疲労した声でそう言って、エルザは傘を差し出した。
「この雨には濡れない方が良いわよ。」
「シオナの連中は、どうした。」
「すみません。皆どうにも動けなくって…この雨、長く当たり続けるとどうも体がだめになるみたいで…」
「…おい、あいつら今どこにいるんだ、」
「あぁ、だめよ行かない方が良いわ。ブライト様が、至急国務長官室に来るようにと。とにかく、今は急いで…」
そう言って、彼女(本当は彼なのだが)は力なく手招きする。
体がだめになると言う表現が、何となくひっかかったが、上官の命令であるからには仕方がないとブラッドは先を急いだ。
外には相変わらず、吐き気を催すような臭いが満ちていた。