グレスト王国物語
*****

「…もしもし、俺だ。」

ブラッドは、携帯電話の向こうの相手に呼び掛ける。

広場の近くの小さな井戸に腰掛けて、小さな電子器具から聞こえてくる声に耳を澄ます。

日が暮れかかり、寒さはますます酷い。

本来この時間帯は、この井戸の周りも、夕飯に使う水を汲むために訪れる主婦たちで賑わうのであろう。

だが、いつまで経っても人が集まる気配はなかった。

「なぁにが「シルヴァちゃんは、瞳が銀色だからきっともんの凄い魔力を持ってますよぉ〜」だ!全っ然だめじゃねぇか。」

「………」

「ローラは無駄に寒いし…は?…いや、雪上の美女なんていねぇから。」

「………」

「女神の涙?…あぁ、見つけた。やっぱりあいつが持ってやがったぜ。ジェシカ。」

「………!」

「賭けは俺の勝ちだな。で、奴の居場所は分かったのか。」

「………」

「上出来じゃねぇか。すぐ俺の端末に送れ。」

満足げに電話を切ると、すぐにローラ王国の地図が送られて来た。

チェックポイントを確認する。

ふと、人の気配がした。
< 22 / 243 >

この作品をシェア

pagetop