グレスト王国物語
「あなた様は、大臣や、部下、たくさんの者を処刑なさいました…」
「…それが?」
「民は、あなた様を…恐れています。」
「……。」

「国に春が訪れないのは、あなた様のせいだと言う輩まで出てきました。」
「……。」

「バルベール様、王になってはいけません。逃げましょう。今ならまだ…」

ぱしん!

突然、ジェシカの頬に灼熱の痛みが走った。

バランスを崩してよろけると、今度は腹を足蹴にされて、冷たい床に叩きつけられる。

バルベールの厚いブーツが、深々と腹に沈み込んだ。
息が、詰まる。

痛みに燃える身体は、ただひたすらに警告を発していた。

「…悪いのは、私か?」
「く……ぁ、」

「自分の父に、大臣が毒を盛っていても、か。」
「それ…は、」

「そうまでして助けた父が、私を罵倒し、殺そうとしてもか!?」

靴の圧力が、増す。

ジェシカの意識は、朦朧とし始める。

「私が友だと思っていた男は、私の金を持ってどこかへ消えた。」

身体が、言うことを利かない。

「私が信用していた部下は、私を後ろから刺した。」

耳元で、りんりんと鳴る鈴の飾りが、酷く耳障りだ。

「誰も私のことを理解しない!!悪いのは、いつだって全て私だ!」

息が、苦しい。
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