グレスト王国物語
*氷の女神
ローラの城下町を囲む高い石の城壁の外に出ると、街から少し外れた草原には、豊かな水をたたえる川(今は、凍りついている)がある。
その川に、寄り添うように茂る森の奥。
ふと、木々を割って現れた洞穴の中をブラッドは歩いていた。
一見すると、それは獣の穴のようで、よほど注意しなければ見逃してしまいそうなほど木々に覆い隠されている。
しかし、中に入ると光り輝くまでに隅々まで凍りついた石の壁が、聖域的な冷気を漂わせていた。
深夜─ただでさえ冷え込む時間帯だが、ここは更に寒さが酷い。
進めば進むほど、冷気は強くなって行く。
肌を焼くような冷気の中をブラッドは進む。
不自然に開けたところに着いた。
彫り込んだ石壁には蝋燭が灯り、凍った天井をてらてらと妖しく照らし出す。
小さな部屋の奥、氷の台座の上には、白い女が物憂げに横たわっていた。
その身に纏う衣服は、ない。
女は、ブラッドの気配に気が付くと、うっすらと目を開いた。
「…何、しに来たの?」
涼しげな声が、部屋に響いた。
「あなたも「契約」しに来たのかしら?」
「馬鹿言うな。俺は、バルベールのようにはなりたくねぇ。…春の女神アイシェ。」
「今は、冬の女神だけどね。」
くすりと笑うと、春の女神「アイシェ」はゆっくりと体を起こした。
その川に、寄り添うように茂る森の奥。
ふと、木々を割って現れた洞穴の中をブラッドは歩いていた。
一見すると、それは獣の穴のようで、よほど注意しなければ見逃してしまいそうなほど木々に覆い隠されている。
しかし、中に入ると光り輝くまでに隅々まで凍りついた石の壁が、聖域的な冷気を漂わせていた。
深夜─ただでさえ冷え込む時間帯だが、ここは更に寒さが酷い。
進めば進むほど、冷気は強くなって行く。
肌を焼くような冷気の中をブラッドは進む。
不自然に開けたところに着いた。
彫り込んだ石壁には蝋燭が灯り、凍った天井をてらてらと妖しく照らし出す。
小さな部屋の奥、氷の台座の上には、白い女が物憂げに横たわっていた。
その身に纏う衣服は、ない。
女は、ブラッドの気配に気が付くと、うっすらと目を開いた。
「…何、しに来たの?」
涼しげな声が、部屋に響いた。
「あなたも「契約」しに来たのかしら?」
「馬鹿言うな。俺は、バルベールのようにはなりたくねぇ。…春の女神アイシェ。」
「今は、冬の女神だけどね。」
くすりと笑うと、春の女神「アイシェ」はゆっくりと体を起こした。