グレスト王国物語
*シルヴァ*

ジャラ………

身を裂くような寒さと、割れるような頭の痛みに、私は目を覚ました。

意識がはっきりしてくる。

…暗い。

私は、自分が牢に囚われていることに気が付いた。

ランプの小さな光しかない、薄暗い牢の中、高く掲げられた左の手首には不気味に黒光りする鉄の手錠がかけられている。

バルベールに殴られたために、切れてしまったらしい。

口の中は生臭い鉄の味で一杯だった。

私は、深くため息をついた。

広いグレスト王国の中には、魔力を持ち、魔法を使う者が未だにいるらしい。

そして、その素質がある者は、瞳の色が特別な色であるそうだ。

(私の目は銀色なんだから、魔法くらい使えれば良いのに…。)

生まれてこの方、才能はその片鱗すら見せてくれない。

がしゃ、がしゃがしゃ、

手にはめられた手錠から逃れようと、細やかな抵抗をしてみる。

手錠は、壊れたり、外れたりする気配すらなかった。

上手く行かないものだ。

よくある話しだと、鉄格子をガチャガチャやって、出せ開けろと叫びまくったりする。

私も、そんな真似をするべきなんだろうけど(実際、したかったけど)牢獄のあまりの静けさに、声すら立ててはいけないような気になる。

暗闇に、静寂。

物音ひとつ、呼吸ひとつでも、一度音を立ててしまえば、何か大切な物を失っでしまう気さえした。

(…寂しい。)

酷く寒い。

吐く息は、白く色づいていた。

ブラッドに連絡しようかとポシェットを探してみたが、やはり没収されたのか、なくなっていた。

(あーぁ、携帯……)

丸めた両膝を、抱え込んで、小さくなった。
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