グレスト王国物語
全く、どこをどうやればこの人に国家警察官が勤まるんだろう。

いや、正確には「勤まった」だ。

グレスト王国には、各地方に散在する地方警察を統括するための、国家警察がある。

去年の春、私はついに念願の国家警察官になった。

長年の夢だった。

正義感とか、そう言ったものの類からではない。

何せ、国家最高警察─給料のスケールもでかい。

まぁ、言ってしまえば金のためだ。

しかし悲しいかな、私が初任給をもらう前に何と国の方が潰れてしまった。

巨大になりすぎたグレスト国。

種族も宗教も発展具合も、てんでバラバラな国々の全てを統治するには、

それはあまりにも大きく、もろくなり過ぎていた。

警察本部がある首都、グレスト(首都もグレスト王国にちなんで、グレストと呼ばれている。)なんてすごい有様だった。

治安は乱れに乱れ、殺人や暴行、窃盗なんかはもはや当たり前。

おまけに異常気象が続いて、地方では食糧難まで起こり出す始末。

見かねたグレスト王国の王は、ついに小国の王がそれぞれに国を治めることを認め、王国の解体を宣言した。

王国の解体は、すなわち国家警察の解体をも意味する。

警察になるために死ぬほど勉強したのだ。

もらう物をもらう前に、リストラだなんて、本当に、夢なら覚めて欲しかった。
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