グレスト王国物語
ガ、チャ

清潔な院内は実に大勢の人間で賑わい溢れかえっていた。

それも、全員が女。

ブラッドは、一瞬男子禁制かと思う。

すぐに脱出したい衝動に駆られたが、待合室の椅子に禿げ上がった頭に汗を垂らした中年の男が座っているのを目撃して、何とか思い留まった。

とりあえず、シルヴァをソファに座らせる。周りの女性方の視線が痛いが、診察の申し込みをしなくてはならない。目的はそれだけではないのだが。

「あら、ボスじゃないですか!!」

背後から聞き慣れた声と嫌な予感……

振り返ると、予想通り長身の女が立っていた。

「…エルザ。」
「やだぁ、もういらしたんですねぇ〜」
「どうしてここに…」
「やだ!彼女がシルヴァちゃん!?」

ブラッドの話を遮ると、エルザは青い顔をして腰かけるシルヴァに近寄った。

「めちゃくちゃ顔色悪いじゃないの。」
「………。」

シルヴァは、答えもしない。

「寝ちゃってる……。」

ふふ。と笑うと、彼女はひょいとシルヴァを担ぎ上げてしまった。

「おい、エルザ!」
「面会の予約なら、ボスがここにいらっしゃるって言ってたんで、取っておきましたよ。病室もとっておいたので、寝かせてきます。」

そう言うと、シルヴァを担いだまま、彼女は病院の奥へと消えて行った。

「…調子良い奴。」

アンドロイドの看護師が、自分の名前を呼んでいる。ブラッドは、渋々ながらも診察室へ向かうのであった。
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