グレスト王国物語
「な…」
ブラッドは思わず声を上げたが、シルヴァはこちらのことなどまるで気にする様子もなく、ずるずると足を引きずって歩いて行く。
「おい、シルヴァ!!」
声を上げて、駆け寄り、肩を掴んで揺さ振る。しかし、彼女は乱暴にその手を払いのけると、目を開いた。
(……違う。)
光が、ない。
いつも、爛々と光を宿す彼女の瞳は虚ろで、そこには何者も映ってはいなかった。
シルヴァは、ブラッドを振り払うと、急に走りだした。その足取りは人間離れした軽やかさで、あっという間に彼女は闇の中に吸い込まれて行ってしまった。
「追いますか、ボス。」
ああ。
言い掛けて、ブラッドは森の切れ間から広がる街の一画が、赤色に包まれているのを見た。街で、火事が起こっている。
「お前はあっちだ。」
頻発する火事の件は、ライラシティの調査資料に記載されており、それは、調査の対象になり得る。
彼女の気配が遠退いて行くのを確認すると同時に駆け出すと、ブラッドはシルヴァの銀色が消えて行った闇の中に潜り込んで行った。
ブラッドは思わず声を上げたが、シルヴァはこちらのことなどまるで気にする様子もなく、ずるずると足を引きずって歩いて行く。
「おい、シルヴァ!!」
声を上げて、駆け寄り、肩を掴んで揺さ振る。しかし、彼女は乱暴にその手を払いのけると、目を開いた。
(……違う。)
光が、ない。
いつも、爛々と光を宿す彼女の瞳は虚ろで、そこには何者も映ってはいなかった。
シルヴァは、ブラッドを振り払うと、急に走りだした。その足取りは人間離れした軽やかさで、あっという間に彼女は闇の中に吸い込まれて行ってしまった。
「追いますか、ボス。」
ああ。
言い掛けて、ブラッドは森の切れ間から広がる街の一画が、赤色に包まれているのを見た。街で、火事が起こっている。
「お前はあっちだ。」
頻発する火事の件は、ライラシティの調査資料に記載されており、それは、調査の対象になり得る。
彼女の気配が遠退いて行くのを確認すると同時に駆け出すと、ブラッドはシルヴァの銀色が消えて行った闇の中に潜り込んで行った。