グレスト王国物語
***
闇の中を駆けるのは、いくつになっても慣れないものだ。
ブラッドは、思う。
真っ暗な中にいると、自分が弱く非力な生き物であることをまざまざと見せつけられる。
誰に?
世界に、だ。
鼓膜に響くのは、自分自身の足音だけ。
それが向かう方向が、正しいのかそうでないのか、それすら見分けがつかなくなる。
人は、闇を照らす為に火という光を手に入れた。
神話の神々が、人間に火を与えるのを渋る話があったが、渋ったその理由が、今なら何となく分かる気がした。
光を手に入れた人は、きっと傲慢になってしまうのだ。
た、た、た、
ブラッドの耳は、前を行くシルヴァの足音を確かに捉えていた。
一体、彼女はどこへ向かおうというのか。
大樹は、さっきからずっと左側にある。このままではただ大樹の周りを一周するだけだ。
不意に、足音が止んだ。
次いで、シルヴァの気配は消え失せていた。
(しまった、)
完全に、見失った。
闇の中を駆けるのは、いくつになっても慣れないものだ。
ブラッドは、思う。
真っ暗な中にいると、自分が弱く非力な生き物であることをまざまざと見せつけられる。
誰に?
世界に、だ。
鼓膜に響くのは、自分自身の足音だけ。
それが向かう方向が、正しいのかそうでないのか、それすら見分けがつかなくなる。
人は、闇を照らす為に火という光を手に入れた。
神話の神々が、人間に火を与えるのを渋る話があったが、渋ったその理由が、今なら何となく分かる気がした。
光を手に入れた人は、きっと傲慢になってしまうのだ。
た、た、た、
ブラッドの耳は、前を行くシルヴァの足音を確かに捉えていた。
一体、彼女はどこへ向かおうというのか。
大樹は、さっきからずっと左側にある。このままではただ大樹の周りを一周するだけだ。
不意に、足音が止んだ。
次いで、シルヴァの気配は消え失せていた。
(しまった、)
完全に、見失った。