グレスト王国物語
***
(あれは、何だったのかしら……)
昨夜の真相を確かめるべく、エルザは再び、あの焼けた森に来ていた。
火はすっかり消火され、今は地元警察によって現場研修が行われている。
勿論、エルザも警察なのでここにいても何の問題もない。
今のところ、放火らしい後や不審なものは一切発見されていなかったし、
エルザ自身、怪しげなところは隅々まで自らの目で確かめたが、何の手がかりも掴めていなかった。
ついに、焼けた森を一回りして、何度見たか分からないスタート地点に戻って来てしまった。
(…駄目ねぇ。)
ため息をひとつ、エルザは渋々森を出た。
駄目な時は、大概いくらやっても駄目なものである。
駅に着くと、駅前にある大きな薬屋の前に人だかりができていた。
興味本位で近づいてみると、どうやらバーゲンの類いではない雰囲気だった。
生憎、かなりの人だかりで、店内の様子は伺い知れない。
「すみません、何かあったんですかぁ?」
傍にいた野次馬に声をかけた。誰かに話したくてウズウズしているであろう、老夫人に、だ。
「なんかねぇ、殺人ですってよ、殺人。」
「…殺人?」
「ええ、ここの薬屋さんね、国長さんのご実家なのよ、それで…」
「誰が、殺されたんです。」
「…国長さん、らしいわよ。」
「うっそ……」
その時、人垣を割って担架が運ばれて来た。
横を通った担架に被せられたシーツの隙間からエルザが見たのは、
初めて病院に行ったときに待合室で見かけた、あの禿げた中年男性だった。
そして、その後について薬屋を出てきた男性とその担架は、吸い込まれる様に救急車に乗り込んで行った。
「あれって……」
間違えようもない。
男は、キリュウ・レナウディオ、その人であった。
(あれは、何だったのかしら……)
昨夜の真相を確かめるべく、エルザは再び、あの焼けた森に来ていた。
火はすっかり消火され、今は地元警察によって現場研修が行われている。
勿論、エルザも警察なのでここにいても何の問題もない。
今のところ、放火らしい後や不審なものは一切発見されていなかったし、
エルザ自身、怪しげなところは隅々まで自らの目で確かめたが、何の手がかりも掴めていなかった。
ついに、焼けた森を一回りして、何度見たか分からないスタート地点に戻って来てしまった。
(…駄目ねぇ。)
ため息をひとつ、エルザは渋々森を出た。
駄目な時は、大概いくらやっても駄目なものである。
駅に着くと、駅前にある大きな薬屋の前に人だかりができていた。
興味本位で近づいてみると、どうやらバーゲンの類いではない雰囲気だった。
生憎、かなりの人だかりで、店内の様子は伺い知れない。
「すみません、何かあったんですかぁ?」
傍にいた野次馬に声をかけた。誰かに話したくてウズウズしているであろう、老夫人に、だ。
「なんかねぇ、殺人ですってよ、殺人。」
「…殺人?」
「ええ、ここの薬屋さんね、国長さんのご実家なのよ、それで…」
「誰が、殺されたんです。」
「…国長さん、らしいわよ。」
「うっそ……」
その時、人垣を割って担架が運ばれて来た。
横を通った担架に被せられたシーツの隙間からエルザが見たのは、
初めて病院に行ったときに待合室で見かけた、あの禿げた中年男性だった。
そして、その後について薬屋を出てきた男性とその担架は、吸い込まれる様に救急車に乗り込んで行った。
「あれって……」
間違えようもない。
男は、キリュウ・レナウディオ、その人であった。