笑うピエロ店員。
「へ……。そ、そんなでいいの」バスケットボールが落ちそうになった。
「え。うん。駄目なの」
「や。駄目じゃないけど」
間の抜けた顔から、にんまりと怪しい笑みに変った。
「そんじゃ決定な。はい、じゃあ千五百六十円ね」
気が変らないうちにとでも言わんばかりに早々と代金を出すお兄ちゃん。
ぼくの手のひらに紙と硬貨が落とされる。硬貨のぶつかる音がした。
ぼくはそれらが逃げていかないように、しっかりと、こぶしを握った。
「じゃあ、おじさんは行くよ。まいどありー」
ニヤケ顔を崩さないまま、この後の幸福を考えているように手を振るお兄ちゃん。
足元から水面が揺れるように消えていくお兄ちゃんに、自分でも以外なほど驚かなかった。
お兄ちゃんならこのくらいする、と思ったのだ。
手を振り返して、ぼくは大きく息を吐いた。
手の中のお金を確認する。
ぼくは本当に何かが逃げないうちに、かすかに香る気のする、甘い匂いをたどって走った。
「え。うん。駄目なの」
「や。駄目じゃないけど」
間の抜けた顔から、にんまりと怪しい笑みに変った。
「そんじゃ決定な。はい、じゃあ千五百六十円ね」
気が変らないうちにとでも言わんばかりに早々と代金を出すお兄ちゃん。
ぼくの手のひらに紙と硬貨が落とされる。硬貨のぶつかる音がした。
ぼくはそれらが逃げていかないように、しっかりと、こぶしを握った。
「じゃあ、おじさんは行くよ。まいどありー」
ニヤケ顔を崩さないまま、この後の幸福を考えているように手を振るお兄ちゃん。
足元から水面が揺れるように消えていくお兄ちゃんに、自分でも以外なほど驚かなかった。
お兄ちゃんならこのくらいする、と思ったのだ。
手を振り返して、ぼくは大きく息を吐いた。
手の中のお金を確認する。
ぼくは本当に何かが逃げないうちに、かすかに香る気のする、甘い匂いをたどって走った。