笑うピエロ店員。
もちろん、黒田瑠果（くろだるか）ちゃんのところに。

おかあさんが、「私は今はお腹がいっぱいだから、瑠果ちゃんと食べてきなさい」って言ったからだ。

瑠果ちゃんは、おかあさんのお見舞いに来たときに仲良くなった子。

ノックしてから扉を開けた。

「瑠果ちゃんっ」
「あ、裕也くん。どうしたの」

瑠果ちゃんは窓際に立ち、お菓子を食べながらゲームをしていた。

「アンセイにしてなくていいの」

アンセイ、という言葉は、瑠果ちゃんのおかあさんの口癖を真似した。

「いーんだ。あたし元気だし。お医者さんが念のため、念のためって、元気なあたしを縛りつけてるの」
「ふうん」

たしか、瑠果ちゃんはもう８年も病院で過ごしていて、重い病気らしい。

瑠果ちゃんのおかあさんが話ているのを聞いてしまった。

とても歩けるような状態じゃないって。

「瑠果ちゃん。ケーキ持って来たんだ。一緒に食べよ」
「え、いいの。やったー」
喜ぶ姿は、実に中学生らしかった。

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