ｻｲﾚｰｼﾞ
通信
　もう彼と付き合って二年になろうとしている。正確には一年と十ヵ月だ。
　彼は大学生。私はひと足早く社会に出て働いている。同い年だが彼は浪人しているのだ。
　彼と出会ったのは彼が二年生の学生実験の時。私は三年生で、先輩としてたまたま指導するのが彼のいるグループだった。その時はたいして気にも止めなかった。
　彼は陽気でユーモアもあるし顔もそこそこ。まぁ私のタイプではないけれど…。
　なぜ彼を好きになったのかは正直分からない。ただ私はよく彼が一人でいるときの、何だか底無しに暗く、だけど覗き込めば底まで見えてしまうような瞳によく目を奪われたものだった。
　思えば最近、連絡していない。私が忙しかったのもあるし、彼は時々、本当に恋人なのだろうかと疑ってしまいたくなるくらいよそよそしくなる時がある。別に彼が冷たいわけではない。
　彼は私に、というか人に優しすぎるほどだし、頭もいい。このまま結婚、とまで最近思う。ただ、彼は物事を深く考えすぎてしまうとこがある…と思う。恥ずかしい話だが、一年と十ヵ月も付き合ってるが、まだまだ彼の底までは見通せていないのだ。
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表紙・目次

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