図書室
「…………」
そこには木下先輩が立っていた。
長かった髪をバッサリ切って、目を隠していた前髪も無くなっていた。
別人のような木下先輩がいた。
「驚いた?」
私は素直に首を縦に振る。
だよね、と笑いながら木下先輩は私の方に近づいてきた。
木下先輩は私のところに来て床に座った。
「座ろう?」
床を手で軽く叩いて聞いてきた。
私は言われるがまま、床に腰をおろした。
そのままお互い喋ることなく、沈黙が続いた。
「あれから…学校、来てましたか?」
最初に口を開いたのは私だった。
「あれから?」
「保健室のときから…」
木下先輩は顔を下に向けてあぁ、と呟いた。
「来てなかった、と思う」
「なんで…急に、いなくなったんですか?」
ずっと気になっていた。
木下先輩がいなくなってから、毎日物足りなさを感じていた。
私が木下先輩を見ると、顔を下に向けている。
「実は、保健室のあの時から考えていたんだ」
下に向けていた顔を上げて言った。
「今まで本当にこの目が嫌だった。でも、あの日真奈美ちゃんに笑った顔が好きだって言われて、素直に嬉しいって思ったんだ」
「目のことを言われたわけでもないのにね。切ろうって思ったんだよ…。それでバッサリ切った」
木下先輩は前髪を切るジェスチャーをする。
「それでも、学校にいなかった期間が長すぎます」
私が少し怒った口調で言うと、
「情けないんだけど、勇気が出なかったんだ。それで結構休んでた」
ごめんね、そう言って私の頭を優しく撫でてくれる。
顔を木下先輩に向けると、視線が合った。
私と木下先輩、お互いの目に吸い込まれるように顔を近づけ、キスをした。
目を開けると目の前には木下先輩の顔があって、目が合うとまた、唇を寄せた。
「私、先輩が好きです。笑った顔も先輩の目も、全部好きです」
顔を離して、私が真っ赤になりながら言うと
「ありがとうございます」
木下先輩は優しく微笑んだ。