図書室
あの後、話が全く入らなくなった私の頭はズルズルと午後の授業まで引っ張られていき、気づいたら放課後になっていた。
今日も担当の日だった私は図書室に向かった。
いつも通りカゴの中に入っている本に返却の印として判子を押していく。
著者名簿を記入しているとお疲れ様、と頭上から知ってる声が聞こえた。
そっと視線を上げれば、目の前には木下先輩が立っていた。
「どうしたんですか?」
「本を借りに来ました」
眼は前髪で隠されているけど、笑った顔がとても優しかった。
やっと返却の仕方を覚えた木下先輩は、この前借りた本をカゴに入れ、私も同時に個人カードを探して木下先輩に渡す。
「ありがとう。残りの仕事頑張ってね。あ、僕は角のコーナーにいますから」
そう言って木下先輩はカウンターから離れて行った。
私は数秒間見つめてからすぐに自分の仕事に戻った。