図書室
コンプレックス
「真奈美、今日餃子とお好み焼きどっちがいい?」
宿題をしていた私の部屋に、ノックも無しで入ってきた母親に溜め息を吐いた。
「お母さんノックくらいしてよ。それに餃子とお好み焼きじゃ全然ジャンル違うでしょ」
「今日はホットプレートでやりたいの!!」
お母さんはそう言って、部屋に入ってきた。
「ねぇどっちがいい?」
「……………お好み焼き」
私が返事をすると、お母さんはわかったー、とスキップする勢いで出ていった。
夕食のお好み焼きをお母さんと食べて、食後のデザートを口に運んでいると、急にお母さんが顔を近づけてきた。
「…………なに」
「あんた、前髪伸びてるわよ。切らないの?」
(前髪………?)
「そんなに?」
私は前髪を手でつかんでみた。いつからだろうか、と考えていたら、木下先輩の眼まで隠された前髪を思い出した。
(確かに伸びたかも…)
私は少し考える素振りをして
「そのうち切るよ」
と言って席をたった。
「ごちそうさま」
最後にそう告げて私はリビングを後にした。