ゆん坊
引っ越し
この町に引っ越してきて…まだ2時間…

お母さんはアパートの玄関でダンボールを開いている


“…お皿かな?”


カチャカチャとガラスの音が聞こえる


僕はアパートの玄関の前に座り、周りの景色を見ている


“うん。きっと大丈夫だよ”


景色を見ながら自分の心に言ってみた


この町に来て2時間と…ほんの少し…



「ゆうき! 中に入りなさい! もう外は暗いでしょ!」


お母さんがアパートの中から僕を呼んでいる



さっきまで僕は違う町にいた…


小学2年の一学期が終わったばかりだった


お母さんから急に引っ越しだって言われた…


友達はみんなびっくりしていた


何人か泣いてくれた


…僕もちょっとだけ泣いた


家で泣いている僕に…


「ゆうき…ごめんね…。…あっ! これプレゼント。前から欲しがっていたでしょ」


そう言ってお母さんは泣いている僕に、デジタル時計を見せた



この町に来て…2時間…もうすぐで3時間…



「はぁ~い」



僕は大きな声で返事をして、小さなアパートの部屋の中に走り込んだ
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