ゆん坊
一部屋しかない家の中を行ったり来たりした


少しずつ外は薄暗くなってきていた…


僕はなぜだか…玄関のドアを開けたり閉めたりした…



“お母さん…怖いよ…”



やがて外は真っ暗になった



僕は部屋の電気を付けることさえ出来なかった



外からの街灯の明かりだけを窓に映し、僕は布団に潜り込んだ…



いや…布団の中に隠れた


暗い部屋はとにかく怖かった…



布団の中に隠れ、デジタル時計を見ると8時だった



“お母さん…早く帰ってきて”



僕は暗闇の布団の中で汗だくになりながらお祈りをした



“僕いい子だよ。お母さんが早く帰って来ますように”



僕は心で何度も呟いた



アパートの隣の部屋から、大きな笑い声が聞こえて来た



僕は耳を済まし、布団の中で静かに隣の笑い声を聞いた


窓からは街灯だけの明かりが差し込んでいる



僕は布団の横にあったお母さんの服をつかみ、布団の中に入れた


“お母さん…”



布団の中でお母さんの服を抱きしめながら呟いた


お母さんの匂いを感じながら…



< 5 / 43 >

この作品をシェア

pagetop