【バーチャルメーカー★博士と助手のとんだ1日】


サミュエルが恐る恐る目を
開けると、既にゾンビ達の
姿は向こう側が透けて見える
ほど薄くなり、それと
引き替えに空に明るさが
戻って来ていた。

危機が去った事が判ると、
サミュエルは草原の真ん中で
両手両足を投げ出し、寝転んで
胸一杯に深呼吸をした。

『お~い!サ~ム!』

博士が緩やかな丘を越えて
やって来た。

サミュエルの傍まで来ると
彼の隣に同じ様に寝転ぶ‥

『無事で何よりじゃ。』

『博士を信じてましたから…』

澄みきった空を眺めながら
サミュエルが応えた。

『この装置はな、日照り続きで
農作物に影響を及ぼし、
苦しんでいる人々に恵みの
雨をもたらす目的で開発した
装置なんじゃ‥』

博士には元々ユーモアの
センスがあった。

同じ雨を降らすなら、人々が
もっと楽しみながら雨を
迎えられる様にと開発したのが
始まりだった。

そこで、博士の趣味である
映画音楽から恵みの雨を
抽出するアイデアを
思い付いたのだ。

不作で落胆していた人々に
笑顔を取り戻す為に博士は
研究を重ねた。

その中で、曲により、
雨以外にも

あらゆる状況が抽出できると
言う事が判明した。

そう、博士の心の女神、
ナタリーちゃんも…。

夜な夜な博士は装置を
2秒ほど作動させて
ナタリーちゃんとの
ミュージカルデートを
楽しんだ。

実験は大成功だった。

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