angel or devil
「たまにあぁいう客いるんだよ。もしまた何かあったら呼んで。
ホールは見てるつもりだけど、気付かない時もあるからさ。」
「はい。ありがとうございました。」
いつも一人で帰る夜道は怖いけど、斉藤さんと歩く事で、なんだかとても安心した。
「うちここです。」
「そう。もう大丈夫だね。じゃあまた。」
ギュッ
あたしは帰ろうと後ろを向く斉藤さんのパーカーの裾を小さく掴んだ。
「結華ちゃん?」
「…………」
急に恥ずかしくなって、振り返った斉藤さんの顔を見上げる事はできなかった。
「!!」
そして……
斉藤さんの指があたしのアゴを上に持ち上げた瞬間、あたしと斉藤さんの唇は重なった――
「俺だって男だよ?そんな顔されちゃ我慢できないよ。」
カァァァァァ――――
あたしの体は一瞬で、火が出そうなくらいに熱くなる。
「じゃあおやすみ。」
そう言って歩き出す斉藤さんに―――
「!!!」
あたしはキスをした。
初めてのキス
そして
二回目のキス―――
あたしは恋に落ちていた。
きっと、もう少し前から……