angel or devil



「たまにあぁいう客いるんだよ。もしまた何かあったら呼んで。
ホールは見てるつもりだけど、気付かない時もあるからさ。」


「はい。ありがとうございました。」


いつも一人で帰る夜道は怖いけど、斉藤さんと歩く事で、なんだかとても安心した。




「うちここです。」


「そう。もう大丈夫だね。じゃあまた。」


ギュッ

あたしは帰ろうと後ろを向く斉藤さんのパーカーの裾を小さく掴んだ。



「結華ちゃん?」


「…………」


急に恥ずかしくなって、振り返った斉藤さんの顔を見上げる事はできなかった。






「!!」

そして……

斉藤さんの指があたしのアゴを上に持ち上げた瞬間、あたしと斉藤さんの唇は重なった――




「俺だって男だよ?そんな顔されちゃ我慢できないよ。」



カァァァァァ――――


あたしの体は一瞬で、火が出そうなくらいに熱くなる。




「じゃあおやすみ。」


そう言って歩き出す斉藤さんに―――






「!!!」


あたしはキスをした。







初めてのキス

そして

二回目のキス―――





あたしは恋に落ちていた。


きっと、もう少し前から……




< 134 / 287 >

この作品をシェア

pagetop