angel or devil
正座をするあたし達を見て、ママは何かに気付いたような顔をして、お父さんの横に腰をかけた。
あたしの横で正座をする慎から、唾を飲み込む音が聞こえた後―――
「大事な結華さんを妊娠させてしまいました!」
そう言って慎は床に額を押しつけた―――
「………顔を上げなさい。」
「私は!結華さんと……お腹の中の子供を……
二人で育てて行きたいと思っております!!」
「……………」
黙ってお茶を飲みこむお父さんに、慎は話を続けた―――
「結婚前の大事な結華さんを、このような形にしてしまい、本当に申し訳ありませんでした!!ですが……
どうか……どうか結華さんを私にください!!」
ドラマの中でしか
聞いた事のない言葉
見たことないシチュエーション
今はあたしがその画面の中心にいる―――
数時間前までは、こんな画面の中心にあたしがいるなんて事は想像すらしなかった―――
そしてあたしも床に額を押し付けた―――
きっと怒ってる……
ごめんなさい……
でも……
あたし産みたい……!!
お願いします……
大丈夫だから……
お願い……お願い……!!
あたしは後頭部に、お父さんとママの視線を痛いくらいに感じていた。