angel or devil
雲の上の華
『eden』
開店直前の慌ただしい店内
それぞれが準備に追われる中、俺はあくびをしながらの遅い出勤。
「あ゛~だりぃ~」
「直さん二日酔いっすか?」
「詩織が寝かせてくんなくてさ」
「あの詩織さんすかー!?まぢ羨ましいー!」
既に用意を終えた一也。
人懐っこい、可愛い弟分。
「あいつの体すげーよ」
「俺も頑張ろー!!」
一也は俺と違って、いつも素直で明るい。
一也は俺にはない何かを持っていて、たまにそれがやけに眩しく感じる。
「夜咲、今日指名何本?」
「10くらいすかねー?わかんないっす。」
俺は大きな鏡の前で髪をいじりながら、鏡の中にいる前田さんに視線を向けた。
「余裕だな」
「余裕で~す」
前田さんは内勤と言ってホストではなく、いわゆる社員でボーイや裏方の仕事をしている。
でも俺がこの店に入った頃はホストだった。
ホストとして接客するよりも、裏方の方が楽しいらしい。
面倒見がよく、誰からも好かれ、頼りにされる。
俺もそんな前田さんを慕っている一人だ。