angel or devil



コンコン


「香織です。」




香織……?



やっぱり一緒だったんだ……







ノックに気付いた直輝は涙を拭い、大きな深呼吸をすると病室の扉を開けた



「ごめんなさい…お医者様がそろそろって…」



「すいません。行きしょう。」



「お邪魔してごめんなさいね。」


"香織"と名乗った女の人は、直輝の影から一瞬だけ顔を出し、あたしに軽く会釈をして見せた



「いえ………」



「結華…じゃあ行くな。体、大事にしろよ」


振り返った直輝はあたしに視線を向けず、その言葉だけを残して病室を出て行った。





やっぱりそういう事じゃない



あたしは間違ってなかった



ずっと一緒なんでしょ?



直輝が愛してるのはあの人なんでしょ?



あたしは……



あたしには……



愛なんて微塵もないくせに






どうしてよ……




どうしてまたあんなこと……




薬見て

病んでるんだなって

可哀想だなって




一瞬同情しただけだ




いらないのに



同情なんていらないのに!!!!




どうしてあたしの心を掻き乱すの……?



もうやめてよ……



もう会いたくない



忘れよう



もう忘れよう……





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