angel or devil
「もういい!!!!」
さっきまでの震える声とは正反対の
奇声のような綾香の声に驚き
綾香に視線を戻すと
「!!!!?」
綾香が肩に掛けていたバッグから、太陽の光りをギラリと不気味に跳ね返す
銀色の鋭い刃物が顔を出した
「やめろ………」
「あんたなんか………あんたなんか………」
その刃物の先端が
この俺に向けられていることなど
刃物から放たれる太陽の光りで見えなくとも
すぐにわかった
「矢崎!謝れよ!」
「ごめん………!!落ち着けって!!そんな事してもしょうがないだろ!!」
「……………」
刃物を両手で握り締め、震える足を一歩一歩踏みしめ近付いてくる綾香
ずっと俺に向けられたままの鋭い先端
「……!!おい!!やめろ………やめろ!!!!!」
俺の足は動いてはくれない
「ねぇ!!君も落ち着いて!!話せばわかるって………!!」
なだめるように話す誠さんの声を
俺の左耳は拾った
「頼むから…………!!」
「やめろ………!!」