angel or devil
「………………」
「――――!?」
俺は産まれて初めて聞いた
人の体に刃物が刺さる
不気味な鈍い音を
だけどその音は
俺の体から聞こえた音じゃなかった
俺が目をつむった瞬間聞こえた音
音が聞こえた後に開いた俺のまぶた
俺の瞳に映ったのは
誠さんの後頭部だった
誠さんの真っ黒な頭が
地面に向かって堕ちていき
俺の視界から消えると
俺を真っ直ぐに見つめる綾香の視線と重なった
綾香の視線からとっさにそらした俺の目は
綾香の力ない手首から
堕ちていく誠さんの手を映した
綾香の手にあるはずの刃物はそこに無く
鈍い音を立てて倒れ込んだ
誠さんの腹に突き刺さっていた