angel or devil
「このままバックレちゃう?」
「しーごーと!」
「じゃあ~終わったらホテルで愛してね♪」
既に開店した店の前
詩織は俺の首に手をまわし、濃厚なキスをした。
結華………
俺は結華を想いながらそのまま詩織とキスを続けた。
結華……
その名前を何度も心の中で呼ぶ―――
カッカッカッ
ホールに響き渡るヒールの靴音に気付き、俺は慌てて詩織を突き放した。
カッカッカッ
「!!!!」
俺は目を疑った。
頼む……誰か違うと言ってくれ……
「結華!!!」
俺の頭を一瞬で真っ白にしたのは……
間違いなく……紛れもなく……
結華の姿だった。
よりによってどうして今……
俺の中の何かが音を立てて崩れ落ちる―――
「違うんだ結華――ッ!!」
何が"違う"んだよ。
結華が見たままだ……
所詮、陽の当たらない所にいる俺は……
雲の上になんて上がれない運命なんだ……
結華は一瞬だけ俺に視線を向けて微笑み、何事もなかったかのように店に入っていった。