street love
「忘れてた…」

「自己紹介遅れたけど、俺はヒビキ。二ノ宮響《ニノミヤヒビキ》っていうんだ。よろしく」

「私は中村美波。林吹川高校の二年」

「林吹川?へぇ…ところで、みなみちゃんの名前って漢字?」

「はい」

「どんな風に書くの?普通に'南,って字なの?」

「ううん、違う。美って字に波っていう字を書くの。人に説明するの面倒な名前…」

「そんな事ない…良い名前だよ。美しい波…キミに似合ってると、俺は思うけどな」

(「何かちょっとキザっぽいな、この人」)

美波は響の隣に座り、また話す。

「あの…二ノ宮さん」

「ヒビキでいいよ。敬語じゃなくていいし」

「じゃあ…ヒビキ君って、いつもここで歌ってるの?」

「いつもじゃないよ。気が向いた時とか」

「そうなの…」

「キミが聞きに来てくれるなら、俺はいつでも歌うよ」

「はは…じゃ昼間は何してるの?」

「いちょうこれでも普段は宝城《タカラギ》の大学生してるから」

「宝城ってあの有名な?」

「有名?」

「あそこって確か、女子大じゃ」

「俺が入った年に共学になったんだよ。まぁ今でも女の子の方が多いけど」

「そうなんだ…」

きっとこの人は女好きなんだろうと美波は思った。
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