street love
しかし、そうしてる内に有野は目の前に来てしまった。


「来ちゃったよ。美波」


あずさが小声で教える。


「よっ美波!」


声を掛けてきた有野だが、何の返事もしないで美波は黙って下を向いている。


「久保も久し振り、元気?」

「あ、はい。元気です」

「おーい美波。まだ怒ってんの?いい加減機嫌直せよぉ。せっかくここまで来たんだからさ」


やっと口を開いた美波が言った台詞は冷たい。


「何で来たの?」

「何でって美波に会いに来たに決まってんじゃんか」


明るく笑顔で有野が言うけれど、美波はその逆にどうでもいいように喋る。


「わざわざ交通費かけて来てくれたのぉ」

「そうだよ」

「大変だね」

「だってよ。携帯に電話しても、美波ずっと留守電だし…家には掛けられないから直接ここに来れば話せると思ったんだよ」

「そうなんだ」

「なぁこれからどっかに行かないか?昨日の埋め合わせするよ」


この後の予定は
あずさと遊ぶと決まっているのにいきなりの誘い。もちろん美波は行く気はない。
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