君と、ボール。
コツコツと私の中に響く、ヒールの音。
その音が、だんだん大きくなってくるようで。
私の鼓動と、ヒールの音が重なる。
二つの音は、止むことなく鳴り続ける。


ヒールの音が止まる。
辿りついた証拠。



私の目の前にあるのは、一つの家と。
君の名字が書かれた表札。
そして、インターホン。


人差し指をボタンに近付ける。
私はドキドキしながら、人差し指に力を込めた。


ピンポーン


機械音が鳴る。

どうしよう・・・・。

こみ上げてくる不安。



「はーい。」




玄関が開き、出てきたのは君のお母さん。


私は慌てて君の名を伝えた。
お母さんには何度も会ったことあるけど、緊張する。


「あぁ、あの子なら友達の家に泊まりに行ったわよ。」

にっこりしながら言う。


私はがっくりした。
折角、ここまで気合いを入れてきたのに。
空回りだったみたい。


「・・・あの、よかったらあがってく?」


お母さんの一言で、私は君の家に入ることになった。

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