ミッドナイト・スクール
とりあえず三人は渡り廊下を通って、南側非常口からHR棟へ走り込んだ。
「いててててて」
「大丈夫か? ちょっとじっとしてて」
冴子はハンカチを取り出すと、信二の切り傷に巻いてやった。
「悪い。冴子こそ擦り傷だらけだぞ、大丈夫か?」
「私はしょっちゅう稽古でなるから平気さ」
二人のやり取りを魅奈は複雑な心境で見ていた。普段の冴子は男勝りな性格のため、
学校の男子は心優しい彼女の本当の一面を知らないのだが、冴子は捺り傷さえなければ、かなりの美人であるし、流れるストレートヘアに整ったスタイルは女の魅奈から見ても憧れてしまう。
Tシャツを押し上げる冴子の豊満な胸を見て、魅奈は思わず自分のささやかな膨らみに手を当てた。
《信二先輩もやっぱり胸の大きい女性の方がいいのかな》
あまりに場違いな事を考えてしまい、慌てて頭を振る。
「さて、とりあえず会議室へ戻るんだったな……」
一歩前へ出た冴子は突然しゃがみこんだ。
「どうかしたのか冴子?」
「いや、ちょっと靴紐がね……」
顔を上げた冴子を見て、二人はようやく、彼女が靴紐を結び直しているのではなく、右足首を押さえている事に気が付いた。
「冴子! お前、足を怪我したのか!」
「……何でもないよ」
「何でもない訳あるか、ちょっと見せてみろ」
「いつつ!」
言うが早いか信二が足に触れると、足に触れただけで冴子が痛みを訴えた。
「どうやら酷く足首をひねったみたいだな。さっき飛び降りた時の着地で痛めたのか?」
「多分、そうだと思う」
「ちょっと待って下さいね」
魅奈はポケットからハンカチを取り出すと、流し台の所で濡らして帰って来た。
「これから脹れると思うんで、少し冷やしておきましょう」
靴下をぬがし、足首に丁寧に巻いてやった。
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