ミッドナイト・スクール
嫌な予感がした信二だったが、それは他の全員にとっても同じようだった。
「俺、見に行って来る」
「わ、私も行きます」
一人で行こうとする信二に、魅奈がついて行こうとしたが、ユリがそれを引き止めた。
「待って、魅奈ちゃん。あなた指をケガしているでしょう? それに冴子も……二人の傷の手当をしてあげて、信二君には私がついて行くわ」
「え、大丈夫ですよ。こんなの大したことないです」
慌てて魅奈は腕を後ろにもっていった。
「この会議室には救急箱があるわ、保健室は……ちょっと入れないと思うから、今のうちに手当をしておいた方がいいわ。魅奈ちゃんは冴子についててあげて。和哉君、みんなを頼むわね」
そこまで言われては、魅奈も無理について行く訳にも行かない。
「……わかりました」
妙にしょんぼりする魅奈を、冴子は苦笑しながら見ていた。

「気をつけてな。何かあったら呼べば直ぐに行く」
二人を廊下に送り出すと、和哉はドアを閉めた。
……廊下には何の物音も人影もない。後藤が帰って来る気配はない。ただいつもと変わらない冷えきった床とカベ、そして非常灯の光があるだけだ。
「行きましょう」
ユリと信二は事務員室へと向かった。
ドア窓から覗いてみても、事務員室には何の気配も感じられなかった。
「おかしいなゴッチーいないぞ」
信二がドアを開聞けると、ドアにコツンと何かが当たった。
「きゃああっ!」
……ドアがぶつかったのは後藤の足だった。
仰向けに倒れている後藤は、一目で生きていない事が分かった。なぜなら、彼の体からだけで出たとは思えない程の血の海の中に横たわっていたからだ。
「そ、そんなゴ、ゴッチーまで……」
唯一の大人であり、頼れる存在だった後藤が死んだ。また仲間を失い、言いようのない怒りと恐怖を受けた信二だったが、この惨い有り様を見て、冷静でいられる自分にも驚いていた。
それは、今までの数々の異常な出来事のせいで、感覚が麻痩してしまっているのかも知れないし、単に人間の慣れという習性のせいなのかも知れない。
< 105 / 139 >

この作品をシェア

pagetop