ミッドナイト・スクール
魔女は人間に復讐をする為だけに、魔界からやって来たと一言ったυ
「しかし、今はその時とは時代が違う。それに、ここは日本だ、ヨーロッパじゃない。俺たちには何の罪もないじゃないか」
和哉がもっともな意見を述べたが、魔女は聞く耳を持たなかった。
「同じさ。時代が変わろうが、国が変わろうが、やっている悪事は少しも変わってはいない。いや、むしろ悪化しているのではないか? 世界のどこかしらでは絶えず戦争をしている。弱い者を傷つける強者がいる。生活の快適さだけを重視して森林を伐採してオゾン層を破壊し、地球温暖化も進んでいる。いかに科学が発達しようとも人間は自ら地球を滅ぼそうとしている」
「お、お前、中世の人間だったなら、何で今の環境事情を知ってるんだよ、オマケに日本語も堪能だし」
和哉の質問に、魔女は意外な返答をよこした。
「それは、この体が現代のものだからだと言ったろう。私は魔界からの召喚でこの体に乗り移り、この身体の持つ能力を取り込んだ。そして現代の世の中というものを知った。やはり人間を滅ぼさない限り何も変わらない。お前たちの事も適当に呼び出した訳ではないぞ。この肉体の持ち主と関わりのある連中だったから呼び出したのだ。その方が殺した時に得られるエナジーも多くなるのでな。だからお前たち、私の事を死神だの魔女だのと呼ぶのは構わないが……クラスメイトなら名前で呼んでやった方がいいのではないか?」
魔女はそう言うと、ローブのフードに手をかけ、ゆっくりと顔を見せた。
「な、なにぃ!」
「そんな、嘘でしょ」
驚きのあまりに、和哉はおろか信二や冴子、ユリまでもが声を上げた。
それもその筈だ。フードから現れた顔は浅岡……。最初に殺されたとばかり思っていた浅間幸だったのだ。
「浅岡、お前、生きていたのか!」
和哉が震えた芦を出した。
メガネをかけていないが、顔は間違いなく浅岡本人だ。
「確かに、この体は浅岡幸という者の肉体ではあるが、精神の方はとっくに死んでいる。召喚の際に私が乗り移り、この女の精神だけを葬ってやったわ」
初めて魔女の顔に表情が表れた。それは見た者全てを凍りつかせるような、恐ろしい微笑だった。
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