ミッドナイト・スクール
……時刻は七時を回ったが、『水色の招待状』の差出人はまだ現れない。
「ところでさあ、一体何の集まりなのかな?」
悠子が誰にでもなく問う。
「さあなあ。何にしても呼び出しといて遅れるとは太え野郎だ」
後藤が冗談混じりで答える。
「もしかしたら、誰かのいたずらなんじゃないか? 意外と隠しカメラかなんかついていたりして、俺たちの行動を見てたりとか」
「文化祭は終わったのよ? そんな事、誰がするのよ」
ユリは和哉を諭すように言った。
「それにしても暇だな」
信二は腕時計を見ながら呟いた。
「おい文彦、本当に今日なのか?」
種田は文彦に尋ねた。
「うん、間違いないよ。十三日の金曜日……午後七時、場所は生徒会室。他の人達とも同じだし」
文彦は丁寧に手紙を読み直し、兄にそう告げた。
……種田兄弟。文彦は兄の種田の性格とは正反対であり繊細だ。瞳は優し気なのだが、それでいて何か不安を抱かせる青白い光を帯びている。
「そういえば今日は十三日の金曜日なんだよな、まったく……こんな不吉な日に呼び出すなんて、どういう奴なんだ」
種田が皆に向かって言った。
「おっ、種田。お前、『十三日の金曜日』なんて言って、けっこうオカルト好きなのか?」
和哉はニヤリと笑って問い掛けた。
「馬鹿いうなよ、ジェイソンでも出るっていうのか? こんな何もない学校を襲う怪物なんかいるかつてんだ。それとも誰かジェイソンに狙われるような事でもしている奴がいるのか?」
種田はホラー好きで、メジャーなホラー映画は一通りチェックしていた……が、その事を知っているのは弟の文彦くらいのものだろう。
「この学校の七不思議とかって聞かないけど、何かそういった話はないのかな?」
悠子が後藤に尋ねる。
「さあ、俺もまだこの学校じゃ新しい方だからな、特に怪談は知らないな」
後藤は両手を挙げて降参した。
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