ミッドナイト・スクール
「俺、一つ面白い話を知ってるぞ」
信二が口を開いた。
「何で信二先輩が知ってるんですか?」
隣で魅奈が尋ねる。
「ああ、ウチの近所の人でさ、ここの卒業生がいるんだよ。五年前に卒業した人なんだけど、その人も別の先輩から聞いたっていう話を教えてくれたんだ。この清和西高佼で実際にあった話らしいよ」
「その人……美人ですか?」
……ずるっ!
信二の他、和哉や悠子もずっこけた。
「な、何でそんな事聞くの」
「いえ、別に……」
魅奈は切なそうに目を閉じた。
「……で、情二、その話ってのは何だ?」
和哉が先をせかした。
「あ、ああ、その話だったな」
信二は唇を慎重になめて濡らすと、ゆっくりと語り出した。

「それは、いまから三十年位前の事だったらしいんだけど……」
ゴクリ、と誰かが唾を飲む音が聞こえて来た。
「この学校で、男女合わせて十人もの生徒が、一晩で死んだらしいんだ……身体を切り刻まれたり、首だけ切られていたり、ナイフが突き刺さったまま死んでいたり、首吊り自殺だったり……。警察の調べでは、特定の恨みを持つ生徒どうしによる事件……という事で捜査していたらしいんだけれど……。殺された生徒達には、特に原因となる様な怨恨関係はなかったし、それどころか、お互いが何も知らないような関係の生徒達ばかりだったんだ」
信二は真剣な面持ちで語った。
「そ、それで……どうなったんですか?」
魅奈は信二の腕を抱え込んで、震えながらも続きを聞く。
「ああ、それで犯人が分からないまま捜査は打ち切りになったんだ。この被害者たちには何の共通点もなかったのだけれど、警察の調べで妙な事が分かったんだ」
「妙な事?」
ユリが尋ねる。
「ん、それはね、校舎のあちらこちらで彼等は殺されたんだけれど……何か気づかないかい?」
「よく分かんない」
悠子は顎に指をあてて考えるポーズを取る。
「十人もいて、一人も逃げなかった……って事か?」
後藤が悠子の横から静かに言った。
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