ミッドナイト・スクール
全員が一斉に後藤の方へ振り向き、その後、視線を信二へと戻し返事を待つ。
「そう……いや、正確には『逃げられなかった』んだ」
信二は、ギュッと腕を握ってくる魅奈の震えを感じ取りながら言った。
「確かに、逃げようとした痕跡はあったらしい。窓ガラスは幾つか割れていたし、ドアも幾つかはカギが聞いていた。それでも彼等は校舎から脱出する事が出来ずに、一人残らず校舎内で死んでいた。彼等の死に顔は恐怖、混乱、怒り、絶望……ありとあらゆる表情が読み取れたという事だそうだ……」
生徒会室は静まり返った。
「ちょっと信二君、それのどこが面白い話なのよ、目茶苦茶怖いじゃない。この後自転車で、暗い夜道を帰る私の身にもなってよね」
悠子は後藤の腕を掴み、ブンブンと振る。
「えっ、いや、だって、みんなが話せっていったから……」
「もう少し内容を考えてから言えよな、魅奈ちゃんなんか泣いちゃったじゃんか」
「泣いてません!」
怒りの形相で和哉を睨み付ける魅奈だったが、半分泣きべそをかいていたのは事実だ。
「でも、なかなか強烈な話だったな。この学校にそんな過去があったなんて知らなかったぜ」
種田は面白そうに笑う。
「ま、たしかに学校としちゃ、何としてでも公にしたくない事だし、受験生にとっては憧れの学校だからな。変な噂が立って競争率が下がれば儲け物って訳だし……まあ何にしても、学校側は迅速に処理したって事だな」
和哉はウンウンと領く。
「でも……何で殺された生徒達は、その日、学校に残っていたのかしら?」
ユリが怪訝そうな顔で言う。
「うん、その事なんだけど……何でも殺された生徒達の元に、呼び出しの手紙が届いていたとか……」
信二は記憶を探りながら答える。
< 25 / 139 >

この作品をシェア

pagetop