ミッドナイト・スクール
グオオオオオ!
怪物は大きな腕を振り上げ、鋭い爪を光らせた。
ブンッ!
ザグッシャ!
……讐備員の首が飛んだ。切断面から更に大量の血飛沫が上がる。
……ドンッ、ゴロゴロ。
空中を舞った首が落下し、信二たちの足元へと転がった。
「きゃあああっ!」
悠子の絶叫で、全員が我に返った。
「逃げろ!」
後藤の声に、全員が慌ててH・R棟の方へ戻ろうとする。
「うわああっ、逃げろ!」
「きゃああ!」
「どけえ!」
狭い廊下はたちまちパニックになり、腰の抜けた魅奈、悠子をそれぞれ信二、和哉が背負うようにして逃げだす。
「あっ!」
「うわっ!」
一番後ろを走っていた浅岡と種田は、足が絡み合い、もつれるようにして転んだ。
「何しやがる、離せ!」
「きゃあっ!」
浅岡を突き飛ばし、種田は走りだす。
「ま……待って!」
自分一人を置き去りにして逃げて行く。
誰も彼女を助けられる者はいなかった。いや、正確には種田だけは浅岡を助けられる位置にいたが、彼女を突き飛ばしてまで逃げた種田が、浅岡を助ける筈はなかった。

「いやあああああっ!」

それは、今までの物静かな浅岡からは想像も出来ない、長く、そしていつまでも耳に残る断末魔だった。
必死に逃げながらも、ユリは耳を塞がずにはいられなかった。
全員の耳の奥で、浅岡の悲鳴が木霊する。
……やがて、悲鳴は止み、もとの静寂が訪れた。
漆黒の闇。
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