ミッドナイト・スクール
……夜の校舎での逃亡劇はまだ始まったばかりだった。
「ひい、はあ、ひい」
「はあはあはあ」
暗い室内に乱れた呼吸音が響く。
「一体、何がどうなってるんだ?」
息を整え、信二が誰かに向けて解答を求める。
「知らねえよ、何が何だかさっぱりだ」
和哉は肩を上下させながら答える。
しばらくして、全員の呼吸が整うと、ユリが口を開いた。
「ねえ、幸は? 幸はどうなっちゃったの?」
ユリの言葉は、浅岡を突き飛ばした種田に向けて言っているように取れる。
「知らねえよ」
種田は自分のした事に罪悪感を感じている風でもなく答えた。
「知らないって、あなたが幸を突き飛ばしたんでしょ」
「うるせえな。奴が足を引っかけてきたからはね除けただけだ」
「はね除けただけって、それで幸は、幸は……」
ユリはその先の言葉を続ける事は出来なかった。
……そう、浅岡は殺されたかも知れないのだ。あの正体不明の巨大な怪物に。
最後の浅岡の悲鳴が鮮明に蘇る。
悠子は首を振って、嫌な想像は打ち消した。
「とにかく、幸を助けに行かなくちゃ」
「待てよ、またさっきの場所に戻るつもりか? さっきの怪物がいたら、今度は俺達が殺
されるかもしれないんだぜ」
種田は敢えて皆が黙っていた『浅岡は既に殺されている』という表現を使った。
「とにかく、幸を助ける事の方が先決よ」
「死んだ奴を助けに行ってどうするってんだよ!」
パフン!
ユリの手袋をつけた平手が種田の頬に飛んだ。
「死んだなんて滅多に口にするものじゃないわ。確認もしないで勝手に決めつけるのはやめて!」
一瞬何が起きたのか分からなかった種田は、頬を押さえると、直ぐに怒りを露にした。
「何しやがる! もうやってられねえよ。こんな所、今直くに出て行ってやる! 文彦、帰るぞ!」
「ひい、はあ、ひい」
「はあはあはあ」
暗い室内に乱れた呼吸音が響く。
「一体、何がどうなってるんだ?」
息を整え、信二が誰かに向けて解答を求める。
「知らねえよ、何が何だかさっぱりだ」
和哉は肩を上下させながら答える。
しばらくして、全員の呼吸が整うと、ユリが口を開いた。
「ねえ、幸は? 幸はどうなっちゃったの?」
ユリの言葉は、浅岡を突き飛ばした種田に向けて言っているように取れる。
「知らねえよ」
種田は自分のした事に罪悪感を感じている風でもなく答えた。
「知らないって、あなたが幸を突き飛ばしたんでしょ」
「うるせえな。奴が足を引っかけてきたからはね除けただけだ」
「はね除けただけって、それで幸は、幸は……」
ユリはその先の言葉を続ける事は出来なかった。
……そう、浅岡は殺されたかも知れないのだ。あの正体不明の巨大な怪物に。
最後の浅岡の悲鳴が鮮明に蘇る。
悠子は首を振って、嫌な想像は打ち消した。
「とにかく、幸を助けに行かなくちゃ」
「待てよ、またさっきの場所に戻るつもりか? さっきの怪物がいたら、今度は俺達が殺
されるかもしれないんだぜ」
種田は敢えて皆が黙っていた『浅岡は既に殺されている』という表現を使った。
「とにかく、幸を助ける事の方が先決よ」
「死んだ奴を助けに行ってどうするってんだよ!」
パフン!
ユリの手袋をつけた平手が種田の頬に飛んだ。
「死んだなんて滅多に口にするものじゃないわ。確認もしないで勝手に決めつけるのはやめて!」
一瞬何が起きたのか分からなかった種田は、頬を押さえると、直ぐに怒りを露にした。
「何しやがる! もうやってられねえよ。こんな所、今直くに出て行ってやる! 文彦、帰るぞ!」