ミッドナイト・スクール
……室内のカーテンは風に吹かれてユラユラと揺れていた。窓越しに見える月は真円を描いている。風が嫌な臭気を運んで来る。
部屋の入口に立ち尽くす和哉は、再び見る人間の死体に、もはや感情を露にする事さえ出来なかった。
そんな和哉の横を、ユリが通り抜けて教室へと入る。
「大丈夫よ」
和哉の心配をよそに、ユリは死体に歩み寄る。
男女二名の無残な死体が床に転がっていた。
「この子達は……確かこのクラスのH・R委員だわ。何度か委員会で見かけた事がある」
ユリは二つの死体を見やり、ゆっくりと離れる。
「しかし、これは酷い」
教室に踏み込んだ和哉は、手で口を押さえながら、死体の状態を見る。
上半身と下半身が真っ二つに切り離された男の死体。上半身は仰向けになっていて、顔や他の場所に傷はなく、切り離された胴体からは、ドクドクと赤黒い血が流れ続けている。
女の方の死体は、とても見れたものではなかった。
見た目ではもう、その死体が男か女かの判別は出来ない程だった。長い髪と服装から女性であると分かるだけだ。死体は後ろの壁に寄りかかって、座る様な格好になっていた。その死体の顎の辺りからは、大量の血飛沫が、未だ噴水の様に上がっている。なぜ、『顎の辺り』かというと、死体には顎がなかったのだ。顎から下はちぎり取られ、目の前に無残に投げ捨てられていた。
怪物はこの女性が悲鳴を上げた時、口の中に指を突っ込み、強引に引き裂いたのだ。
和哉の耳に、今し方聞いたばかりの、女の絶叫がリフレインする。
「出ようぜユリ」
二人はゆっくりと教室を出ようとした。
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