ミッドナイト・スクール
ふと、歩きながら魅奈が何かの封筒を渡してきた。
「先輩、ちょっとこの手紙を見てくれますか」
信二は一瞬ドキッとしたが、別に信二へのラブレターという訳ではないようだった。
「どれどれ」
歩きながら、信二は水色の差出名のない封筒から、真っ白の手紙を取り出して読んでみた。

『十三日(金)午後七時、生徒会室でお待ちしています。1・G』

見たところ、普通に告白の呼び出しのようにもとれる。
「それ、何か変じゃありませんか、その文字ワープロ文字ですよね。なんで直筆じゃないんでしょうか?」
確かに告白の呼び出しなら、いちいちこんなワープロを使う事はないのだが、字が下手という事ならワープロで作ったのも領ける。
「この人、字が下手なんじゃないかな。それと差出人の名前がないのは恥ずかしかったからかも知れないよ」
「このGっていうのは何なんでしょうか?」
「きっとイニシャルだよ、後藤とか権田とか」
そのような名前の生徒がこの学校にいるのかどうかは知らなかったが、信二はとりあえずそう言っておいた。
「そう……ですよね。うん、そうかも知れないですね」
一瞬、寂しそうな表情をみせた魅奈に信二は気づかなかった。
その後、学校の事や、近く迫った球技大会についての雑談をしながら、二人は学校の正門を潜った。
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