ミッドナイト・スクール
血まみれになった欽を放ると、文彦は血に染まった自分の両手を呆然と眺めた。
実の兄を殺した自分の手。狂気に駆られて身体が動いたのは、自分の中のどこかでこうする事を望んでいたせい……。出来の良い生徒、兄想いの弟、温厚で落ち着いた性格。自分にはない狂気の心。これが自分の望んだ本当の自分……。
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」
頭の中の雑念を追い払い、自分に言い聞かせる文彦。
「嘘だ、僕は操られたんだ! 僕じゃない。僕じゃないんだ!」
自分が殺した兄の死体の前で、文彦は泣き叫んだ。
……自分がこんな事をする筈がない。これは夢か、幻覚か。現実であっても自分のせいじゃない。テレパシーを送った何者かの仕業に違いない。懸命にそう思い込む文彦は、保健室の入口がゆっくりと開き、そこに現れた人影に気づくのに多少時聞がかかった。
「だ……、だれだ?」
いつの間にか泣いていた文彦は、涙で濡れた顔を上げた。
……目の前には女がいた。いや、なんとなく女と思っただけで、女かどうかは分からない。ローブをまとい、右手に大きな鎌を持っている。
「お願いだ! 兄さんを生き返らせてくれ、頼む……」
なぜ、そのような願いをしたのかは分からなかった。ただ文彦は、この女から何か不思議な力を感じた。もしかしたら、死神とでも思っていたのかも知れない。
実の兄を殺した自分の手。狂気に駆られて身体が動いたのは、自分の中のどこかでこうする事を望んでいたせい……。出来の良い生徒、兄想いの弟、温厚で落ち着いた性格。自分にはない狂気の心。これが自分の望んだ本当の自分……。
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」
頭の中の雑念を追い払い、自分に言い聞かせる文彦。
「嘘だ、僕は操られたんだ! 僕じゃない。僕じゃないんだ!」
自分が殺した兄の死体の前で、文彦は泣き叫んだ。
……自分がこんな事をする筈がない。これは夢か、幻覚か。現実であっても自分のせいじゃない。テレパシーを送った何者かの仕業に違いない。懸命にそう思い込む文彦は、保健室の入口がゆっくりと開き、そこに現れた人影に気づくのに多少時聞がかかった。
「だ……、だれだ?」
いつの間にか泣いていた文彦は、涙で濡れた顔を上げた。
……目の前には女がいた。いや、なんとなく女と思っただけで、女かどうかは分からない。ローブをまとい、右手に大きな鎌を持っている。
「お願いだ! 兄さんを生き返らせてくれ、頼む……」
なぜ、そのような願いをしたのかは分からなかった。ただ文彦は、この女から何か不思議な力を感じた。もしかしたら、死神とでも思っていたのかも知れない。