ミッドナイト・スクール
暗闇の中、一人の少女のすすり泣きが聞こえる一室……。HR棟1Fの最南、美術室だ。「何で……何でこんな目に遭うの? 私、何かいけない事をしたの?」
悠子は誰もいないのに疑問を投げかける。
美術室はやけにガランとしていた。彫刻や石膏像が置いてある訳でもなく、数枚の風景画が飾られているだけだった。
教室の隅で膝を抱え、縮こまったままの状態で悠子は考えた。
《これは夢。私は悪い夢を見ているんだ。きっと明日の朝になったら、いつものようにお母さんか起こしてくれて、遅刻ぎりぎりに自転車で学校に行くんだ。そして友達と楽しくお喋りをするんだ。いつもと変わらない楽しい毎日、こんな悪い夢なんかとは全く逆の現実。はやく現実に戻りたい。朝はまだなの? お母さん、早く私を起こして、この悪夢から早く私を起こしてよ!》
恐怖の為に、悠子は夢か現実か、判断が出来なくなっていた。いや、こんな現実が実際にあるなどという方がおかしいのだ。誰がこんな現実を信じられるのだろうか?
これは夢か、それとも現実か?
今の悠子には、この恐怖から解放されるのならばどちらでも良かった。
不意に、美術室のドアの向こう側が青白く光った。やがてドアがゆっくりと開き、ローブの死神が入って来た。
「き、きゃああああ!」
悠子は悲鳴をあげて後ずさった。
「ガウガウガウ、ウウウ」
悠子の悲鳴を聞き付けて、ゾンビ犬が窓の外にやって来る。
「ああ、ああああ」
逃げ道のなくなった悠子は、壁際に追い詰められた。
悠子は女よりも、女の手にした大鎌の方が恐ろしかった。ギロチンの宣告を受けたせいだ。
その自分の首を狙う刃が、少しずつ、少しずつ悠子に近づいて来る。
「いや、来ないで! やめてえええ!」
そこで悠子の意識は途切れた。後はただ、意識は深い闇へと沈んで行った。
……悠子は死んではいなかった。
ローブの女は悠子を殺さずに連れ去ったのだ。
いったいなぜ? 女は悠子を殺す気などなかったのだろうか?
……いや、そうではなかった。
ローブを纏った死神は『予告』通りにする為に、悠子をさらったのだ。その予告とは言うまでもなく……。
悠子は誰もいないのに疑問を投げかける。
美術室はやけにガランとしていた。彫刻や石膏像が置いてある訳でもなく、数枚の風景画が飾られているだけだった。
教室の隅で膝を抱え、縮こまったままの状態で悠子は考えた。
《これは夢。私は悪い夢を見ているんだ。きっと明日の朝になったら、いつものようにお母さんか起こしてくれて、遅刻ぎりぎりに自転車で学校に行くんだ。そして友達と楽しくお喋りをするんだ。いつもと変わらない楽しい毎日、こんな悪い夢なんかとは全く逆の現実。はやく現実に戻りたい。朝はまだなの? お母さん、早く私を起こして、この悪夢から早く私を起こしてよ!》
恐怖の為に、悠子は夢か現実か、判断が出来なくなっていた。いや、こんな現実が実際にあるなどという方がおかしいのだ。誰がこんな現実を信じられるのだろうか?
これは夢か、それとも現実か?
今の悠子には、この恐怖から解放されるのならばどちらでも良かった。
不意に、美術室のドアの向こう側が青白く光った。やがてドアがゆっくりと開き、ローブの死神が入って来た。
「き、きゃああああ!」
悠子は悲鳴をあげて後ずさった。
「ガウガウガウ、ウウウ」
悠子の悲鳴を聞き付けて、ゾンビ犬が窓の外にやって来る。
「ああ、ああああ」
逃げ道のなくなった悠子は、壁際に追い詰められた。
悠子は女よりも、女の手にした大鎌の方が恐ろしかった。ギロチンの宣告を受けたせいだ。
その自分の首を狙う刃が、少しずつ、少しずつ悠子に近づいて来る。
「いや、来ないで! やめてえええ!」
そこで悠子の意識は途切れた。後はただ、意識は深い闇へと沈んで行った。
……悠子は死んではいなかった。
ローブの女は悠子を殺さずに連れ去ったのだ。
いったいなぜ? 女は悠子を殺す気などなかったのだろうか?
……いや、そうではなかった。
ローブを纏った死神は『予告』通りにする為に、悠子をさらったのだ。その予告とは言うまでもなく……。