ミッドナイト・スクール
「う……ん」
冷たく硬い床の感触で、悠子は目を覚ました。
「……よかった。私、助かったんだ……でも、おかしいな……動けない」
目を覚ました悠子は、自分が体育館のステージの上にいる事に直ぐに気づいた。
眼前に広かるフロア、バスケットボールのゴールが左右に二つずつ見て取れた。
「ちょっと、なんで動けないの?」
何かで首が固定されていた。手足も縛られているようで、まったく身動きが取れない。
悠子は、固定された首を懸命に捻り、右脇の鏡張りになっている壁を見た。
普段、バスケットボール部の生徒たちがシュー卜フォームのチェックに使ったり、部活でステージを使う演劇部が、衣装チェックをする為等に使われる巨大な鏡に映し出されていた物は……ギロチン処刑に使われる断頭台と、それに首をセットし、手足を縛られた状態の……悠子自身だった。
あまりの光景に悠子は声が出せなかった。悪夢はまだ続いていたのだ。それも予告通りのギロチン処刑が今、行われようとしている。
「……いっ、いやああああ! 助けてえ!」
やっとの事で出した声は、酷くかすれていて、涙のため鼻声になっていた。股間にジワッとした違和感が広がる。
……悠子はあまりの恐怖の為に、自分でも気づかぬうちに失禁してしまったのだ。
目の前にロープがある。そのロープは悠子の頭上の刃を固定していた。床にセットされた金具に結び付けられているようで、刃はしっかりと止まっているようだ。
そして突然、悠子の視界に例の死神が現れた。
「お、お願い……許して。私は……何も悪い事してない……いえ、もし悪い事していたなら謝ります。まだ死にたくない。お願い!」
必死の悠子の願いは聞き入れてはもらえないようだった。死神は悠子の目の前で、どこからかロウソクを取り出すと、手品のように火を点けた。


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