ミッドナイト・スクール
自分のクラス、2‐Aの下足箱の前で、信二は親友の涼森和哉に遭遇した。
「よう信二」
「おう、おはよう和哉」
和哉は清和西高校、軟式野球部のエースで四番だった。西高には硬式野球部がなく軟式だが、その実力は相当のもので、県内でもベスト4には入る。県立のためスポーツ推薦等の者は一人もおらず、全員募集で集まっているのだから、各々は中学である程度ならした者達ばかりである。もちろん、ただ純粋に野球が好きだからという者も多い。硬式を本格的にやるつもりはない。けれど野球は続けたい……そんな者達が集まり、西高の軟式野球部は、いつも明るく、楽しくをモットーに活動している。
「早いな和哉、何かあったのか?」
「またコレよ」
和哉は信二の問いかけに左手の薬指だけを立てて答える。
「それで、どうしたんだ?」
「もち、友達以上恋人少しでOKしたよ」
「はあー、それでいいのかお前は」
信二は右手の手のひらで顔を押さえて項垂れ、頭を左右に振る。
「しょうがないじゃないか、可愛かったんだから」
和哉の左手の指の意味は、女の子からの告白を意味しているらしい。校則のない西高らしく、野球部でありながら和哉はサラリとした茶髪のロング、あまりにも奇麗なその髪質と、スラリとした体形は、後ろから見れば女性に間違われても不思議ではない。和哉は後ろ姿だけでなく、顔の造り自体もとても整っていて、背も高く、肌は小麦色である。
端正な顔立ちは和哉いわく、スペイン人のクウォーターだからという事らしい。そんな和哉は性格がとても明るく、誰にでも分け隔て無く接するので友達も多い。スポーツ万能、成績優秀、先手必勝・・・はちがうが、流行にも敏感で、流行の曲やファッションで、自分かいいと思った物に関しては直ぐに取り入れ、休み時間にはたくさんのクラスメイトと話に花を咲かせている。
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